第4章 Steal my heart、Girl
読んでた古書を静かに閉じると頭に乗せられたティアラを払い除けて結い上げてある髪の毛の束を団子に纏める。
「あ、俺もう魔力殆ど残ってないから魔法は無しな」
『はいはい。これも邪魔だから預かっといて』
「俺のも宜しくー」
と投げ付けられるのは魔導書の入ったブックポーチ。
『今回は何賭けるの?』
「じゃあ俺が一撃でも入れる事が出来たら今夜は一緒に寝よう?」
「「!?」」
『………』
「いーじゃんたまには!双子なんだからさ」
『じゃあいつもの様に一撃も入れられずアタシが勝ったら………』
一同「………?」
『アンタの部屋のベットの下にあるもの全部燃やす』
「待って姉君!?何でそれを…」
『双子だし姉だから』
一体何を隠してたと言うのだろうか。
そもそもチェリーに対して一撃入れるだの入れないなど理解し難い。話の流れから察するにシェリーよりチェリーの方が遥かに強いと聞こえる。あんなに小さな身体だと言うのに。
※※※
『駄目ね、戦闘センス皆無だわ』
「痛ててててて!!ギブ!ギブ!俺の戦闘センスが無いんじゃなくて姉君が強過ぎるだけだから!!!」
双子の組手が始まって、ものの三分。たった三分で勝敗が決まる。チェリーはシェリーの腕を捻りあげ体制を崩させて地に伏せさすとその上に座り込む。
『アンタ男でしょー?魔法ばっかに頼り過ぎなんじゃない?そんなんで今後惚れるであろう女を守れんのかねぇ…』
「んなっ!?」
『弱い男はモテないぞー』
「………あ、姉君だってちょっと太ったんじゃね?でもそのくせ背も小さい幼稚体型のままじゃ色気も何も…」
-ドゴォ-
とシェリーの顔面スレスレに小さな拳が地にめり込む。
「う、嘘だよ姉君!姉君ほど可憐でキュートな人は居な………痛たたたたたた!?」
『調子いい事言ってんじゃな………』
"呪詛拘束魔法…血鎖(ブラッドチェーン)"
『しまっ…!?』
「「「チェリー!」」」
※※※
「そうだ…そのまま動くなよ」
『んぐ…』
コイツは…一番始めにアタシが捕獲した男………ちっ…油断した。まだ低体温症なのは間違いないけど、だいぶ体温が上がってる。動けるまで回復するのを見計らってたって事か。