第3章 Please kiss me、Girl
『氷創成魔法"氷の城壁(アイスキャッスル)"』
「「!!」」
アタシの魔力を分け与えたところでこの二人がアタシの魔力に耐えられる保証はない。
-ガガガガガガガ-
「「………」」
『さてと…敵もあんなんだし二人にはもう魔力が残ってない』
防御魔法の外側で攻撃を弾く音が響く。
『アタシがこのまま討伐するのはあり』
誰よりも魔力は残ってるし戦闘力も自信はある。だけどこれだけの実力者を相手にするとなると魔力の暴走は免れない。アタシ一人だったらいいけどこの二人も巻き込む可能性は大いに高い。
『二人の能力(スキル)盗んでいい?』
※※※
耳打ちする様にか細い声で言われた言葉は意味が分からない。
『三人分の魔法を使えば瞬殺出来るけど…二人にはそれだけの力は残ってない…つまりはアタシが二人の能力を奪って使った方が身内ダメージも無ければすぐ片付く』
そう出来るならそうして欲しいし、魔道士は一つの属性しか扱えない。それなのに一人で三人分の能力を使うと言うのだろうか。
『能力はちゃんと返す………奪ってもいい?』
何をするのかは分からない。だが策があるのならばと頷くとチェリーは魔導書の一番初めのページを開く。
『憑依魔法』
((憑依、魔法?))
『夢魔の口付け(サキュバスのキス)』
生暖かくてほんのり甘みのある柔らかいものが唇に触れた。
※※※
-しゅぅぅううう-
『さっすが王族の魔法。強力で扱いにくい』
炎と氷と水銀の複合魔法を一人で…何だこの圧倒的な魔力は。模倣魔法もあるにはあるが貴重で高度。でもこれは…模倣などと言うレベルを遥かに超えている。
『さてと…残るは貴方だけなんだけど』
「ひっ…」
『どうして貴方だけを無傷にしたか分かるかしら?』
「情報が…欲しい…のか?」
『ぶーっ!不正解』
一同「!?」
カツカツとヒールの音を鳴らしながら尻餅を付きながら後ずさる男に近付いて膝を折って距離を詰める。
『だって情報と言う情報は持ってないでしょ?』
「!」
『ただ魔宮攻略しに来ただけで、そこにたまたまアタシ達が居て戦闘になっただけ。だって対立にある国の者に渡す訳にはいかないものね』
「………」