第3章 Please kiss me、Girl
『宝物庫への近道?』
じゃあやっぱり左かしら。
『よいしょ』
男の首根っこを掴み直して歩を進める。
※※※
「何故貴様が此処に居る」
「それはお互い様だろう」
魔宮を奥に進んだ先にあった広い空間。そこで好敵手と鉢合わせる。この空間への入口は私とフエゴレオンの間にもう一つ。つまりはもう一人………
『あれー?二人共こんな所で何してるの?』
「「!」」
緊張感を溶かす柔らかい声。その声主は本人の数倍はある大きな男を引き摺っていた。
「何だそれは」
『多分スペード王国の魔道士かな。襲って来たし』
「ソイツだけか?」
『強魔地帯だからかな?上手く感知出来ないんだけど30人くらい居ると思う』
平然と言ってのけるチェリーは引き摺ってる男から手を離す。小刻みに震える身体。驚く程の顔面蒼白。そう言えば茶会の時の侵入者もこの様な感じだったか。
『これもアタシのちょっとした魔法。人間って身体の60パーセントから70パーセントは水分でしょ?それを凍らせて低体温症にして動き封じさせてもらってるの』
いつもの調子で説明をするが…それはかなり恐ろしい魔法ではないのだろうか。身体の水分すら凍らせる事が出来ると言う事は………チェリーの領域に入ったら即殺せると言う事。
『死への危険度はレベル5まであって…この人は今レベル3で留めてるんだけど…情報すらも吐けない状態だから放置した方が良かったかしら?』
と小首をかしげてみせるも言動はこの上なく恐ろしい。
『あ!この大きな扉ってもしかして宝物こ………伏せてっ!』
-ぐいっ-
と細い腕が腹に巻き付いたかと思うと抱えられる。そしてあらゆる武器の雨が私達の居た所に降っていた。
『ちっ…まだ攻撃してくるか』
そのまま男二人を抱えたまま武器の雨を素早く避けて行く。こんなに小さい身体で男二人を抱えて身軽に動けるとは大した身体能力をしている。
『2…4…6…20人。一人6~7人…行ける?』
愚問以外の何ものでも無い。
※※※
『ったくもー嫌な能力』
残ってる敵は数人。でも皆が皆それなりの手練だったから二人共残りの魔力は極わずか。アタシの魔力を分け与えたとこで残ってる連中は団長クラス。