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【YOI夢】ファインダー越しの君【男主&オタベック】

第1章 不穏な出会いと、その後で


「日本ではその人気に反して、競技人口の少ないフィギュアスケート選手への待遇は、お世辞にも良いとは言えない。勿論、君達は君達で国内での熾烈な競争がある事は判っているが」
少しだけ表情を正した守道は、ユーリとオタベックを真っ直ぐ見据えながら話を切り出した。
「世界タイトルを獲った勝生勇利レベルの選手ですら、日本のスケート連盟からの支援はほんの僅かで、それ以外の経費は全て自腹だから、スポンサーが付かず資金に行き詰まればおしまいだ。諸外国と違って日本は何の保障もないから、プロやコーチとして生計を立てられるのは、ごく一握りだけ。それ故、大半の選手は学生卒業と同時に競技を引退する。純先輩も、本来その筈だった」

守道の言う通り、純はジュニアの頃から「スケートは学生まで」と決めていて、大学も引退後を見越してスケート強豪校ではない普通の学校に進学した。
しかし、学生最後の年に右膝の靭帯を断裂する大怪我に見舞われた純は、そのシーズンを全試合欠場という、最悪な形で迎える羽目になってしまった。
あまりの事に、一時は全てを投げ出し親戚宅に籠もり続けていた純だったが、流石に大学は卒業しなければと、ゼミには密かに通っていた。
丁度その頃、1回生ながらもその優秀な成績から、特別にプレゼミ生として出入りしていた守道と知り合い、話をしていく内に、このままスケートを辞める事に抵抗を覚えた純は、家族に「あと2年だけ続けさせて欲しい」と懇願、大学院への進学を決めたのである。

「…あの時、俺が純先輩に余計な事を言ったのかなって、正直少しだけ後悔してるんだ。俺の知るあの人は、あくまで優秀なゼミの先輩であって、スケーターの先輩ではなかったから。まさか、年齢的にピークも過ぎた1年以上もブランクのある人が、全日本まで進めるなんて思わなかったからさ。俺としては、辞める前にある程度のケジメはつけた方が良いんじゃない?位のつもりだったんだよね」
「結果が全てだ。貴方が何を言おうと言うまいと、サユリは間違いなく貴方との学問ではなく、スケートを選んでいただろう」
僅かに険しい表情をしながらこちらに歩を進めてきた黒髪の青年に、守道は数度目を瞬かせた。
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