【YOI夢】ファインダー越しの君【男主&オタベック】
第4章 エピローグ
「俺は、この国の支えがあったからこそ今の俺になれた。だから、今度は俺がこの国に恩返しをして、未来に繋げていきたいんだ」
「素晴らしい夢だね。君なら容易く叶えられそうだ」
すると、そんな守道を見て、オタベックは僅かに眉を顰めた。
「何を他人事のように言ってるんだ?俺がリンクを作る時には、貴方に設計して貰う予定なのに」
「へ?」
守道から離れて、劇場に踏み出したオタベックは、軽く手を広げると、もう一度向き直る。
「かつて日本人が、この劇場や様々な建物を作り上げたように、今度は貴方と俺でそれをやるんだ。『カザフの英雄』と日本人建築家によるコラボが、21世紀にこの地で再現…なんて、素敵だと思わないか?」
劇場をバックにポーズを取るオタベックの洗練された動きに、守道は暫し目を奪われる。
改めてこの青年がとてつもない存在なのを認識すると同時に、なぜか守道は、そんなオタベックの言葉に胸をワクワクさせている自分に気が付いた。
「…途方もない夢だな。でも、男ならそれ位スケールのデカい夢に挑むのも、悪くなさそうだ」
「そう来なくてはな」
「今よりずっと技術も資材も人手も乏しい中、彼らはこれだけのものを作り上げたんだ。下らない弱音を吐いたり半端な真似をしては、彼らに笑われる」
そう言うと、守道は決意の意味も含めてカメラを劇場に向けると、写真を撮る。
そして何枚か撮り終えた後で、
「オタベック、」
普段あまり名指しで呼ばない守道の優しい声に、オタベックは振り返ると、カメラを構えた守道を真っ直ぐ見つめる。
ファインダー越しに捉えた愛しい人の無邪気な笑顔に、守道は今後の自分と彼への想いを込めて、もう一度シャッターを押した。
─完─