第16章 報告(後編) (☆)
「…ねぇ水心子、実は僕から君にお願いがあるのだけど…」
「清磨が、ぼ…いや、私に…?」
「うん。実はね………」
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「本当に広いのだな、ここは」
「あぁ。一人で何処へでも行くなよ。アンタは確実に迷子になる」
「むむ、信用がないなぁ」
「今までのアンタの行動でどうやって信用しろというんだ」
はぁ、と溜息をつく山姥切くん。
先程は可愛かったのにな…と少し思い返す。
『…頼むから、無茶しないでくれ…』
そういって、私の腕の中で震える彼はとても愛らしかった。
その後、落ち着いた彼は。
俺が写しなばかりに済まない、といつも通りな返答をした後、さっさと本丸へ戻るぞと手を差し伸べてくれた。
しかし、私はこの政府内をもう少し見たくて。
山姥切くんに案内して貰っていた。
今いるここは、とても美しい洋風の庭園。
素人目にも、管理が行き届いていることはよく分かった。
綺麗だな、この花は何というのだろう…などと話しながら庭園内を歩いていたら。
「失礼。今少し宜しいだろうか」
黒の長い外套と、帽子を被った二人組が声を掛けて来た。
真っ直ぐこちらを見据える少年と。
柔らかい雰囲気の少年。
気配から察するに、恐らく彼らも…
「貴方方も、刀剣男士、だろうか」
「流石だね。僕たちも刀剣男士だよ。僕は源清磨。彼は水心子正秀」
源くんも、紹介された水心子くんも、同時に軽くお辞儀した。
礼儀正しいな、と好印象を受ける。
そして、水心子くんは話を続ける。
用があるのは、私ではなく、山姥切くんの方だった。
「俺に…、調査……?」
「あぁ。そんなに時間は取らせない」
彼の話では、刀剣男士の身体調査と、本丸内でどのように生活しているかの調査だそうだ。
ちなみに、この調査は抜き打ちでどの本丸も受けているもので、今回は政府に来たついでに、受けて貰おうという事らしい。
任意なので拒否する事も可能だという彼の言葉に、山姥切くんはチラッと私を見た。
「政府に協力するのも我々の務めだろう。山姥切くん、調査に協力してやってくれ」