第15章 報告(前編)
そんな彼は、大きな溜息をした後、ではこの報告書は上層部に渡しておく、と無理矢理に話を元に戻した。
またバグが起きてしまった場合、同じように政府への連絡。そして経過観察のうえ報告書の作成、提出を随時行って欲しい、と。
出来ればもうバグなんて起きて欲しくないが。
起きないという自信が何故か全くもって持てなかった。
「今日はご足労感謝するよ」
「もう良いのか」
「今のところは、かな。何かあればこちらから連絡しよう」
「そうか。承知した」
私と山姥切くんは同時に立ち上がり、部屋を出ようとした時だった。
「あぁそうだ偽物くん」
急に、長義くんが抜刀し、山姥切くんに斬り掛かった。
「!?」
ギリギリのところで刀で防ぐも、ジリジリと圧されていく。
そして山姥切くんの一瞬の隙を突き、体制を崩した。
強い。
圧倒的な練度の差だった。
「ふっ。こんなものか、偽物くん」
見下しながら、吐き捨てる。
刀の切っ先を、山姥切くんに向けて。
そしてその刀を振り上げた時。
「……何の真似かな?」
私は、山姥切くんの前で、彼を庇う体制を取った。
「…っアンタ…っ!?」
「巫女とはいえ人間だろう? 俺達とは違って、怪我をすれば簡単には治らないよ?」
「知っている。経験済みなのでな」
確かにあれは長らく痛かった。
主に、薬研君の薬が、だが。
「私は、私の職務を全うしているのみ」
「職務…?」
「刀剣男士の職務が歴史を守る事ならば、審神者の職務は刀剣男士を守る事だ」
「……成程」
ふっと笑った長義くんは、流れるように、振り上げていた刀を鞘に納めた。
そして、やれやれ、と言わんばかりに、肩をすくめる。