第15章 報告(前編)
「あぁ、良かった。まだこちらに居たようだね」
「ちょ、先生!! 勝手に入ったらダメだっつってんだろ!!」
男性二人…、いや、気配から察するに、彼らも恐らくは刀剣男士だろう。
「何事かな、肥前」
「言っておくが、おれは止めたぞ」
溜息をつく、肥前と呼ばれた青年。
そしてこの空気を意に介さず、先生と呼ばれた青年が嬉々として私の傍までやって来た。
「ふむ」
彼は私の頭上から爪先までをまるで観察するように眺める。
「女性をそのように凝視するものではないよ」
「これは失礼」
長義くんの言葉にそう返すが、観察は止まらない。
「…おい」
「あぁ、いいよ山姥切くん。こういったことには慣れている」
巫女というものを物珍しがる参拝客も多い。
このような視線、特に不快とは思わなくなっていた。
「成程、実に興味深いね。君についての話をもっと聞かせて貰えないかい? 5時間ほどで良いのだが…」
「言い訳ねぇだろ。長すぎんだよ」
「実は君の霊力の高さについてある仮説を立てていてね。実証の為に君の血を分けて貰えないかな。なに、一升瓶ほどで構わないよ」
「もっとダメだろ!! ホラ、帰んぞ先生。まだ仕事が残ってんだろ」
「なら1ℓに譲歩しようじゃないか…」
「…邪魔したな」
「ちょ、肥前くん? こんな機会は滅多に無いのだよ? あ、ちょっと肥前くん!?」
先生と呼ばれた彼は、肥前くんに首根っこを掴まれて強制退場となった。
「…すまないね。彼の失礼な言動、謝罪するよ」
「…君も大変なのだな」
「その憐れんだ目で見るのは止めて貰えないかな」
最初の高圧的なイメージが、早くも崩れ去ってしまったな、と。失礼ながら思ってしまった。