第15章 報告(前編)
「全く。兄も兄ならば、妹も妹だな」
「兄様を知っているのか!?」
「当然だろう? 彼ともここで何度も会っているしね。…惜しい人を亡くしたと、俺も思っていた。だが、これほどまでに同じ事を言い同じ事をする子が、彼の跡を継いでいたとはね」
そう言う長義くんの目は優しかった。
もっと兄様の事を聞きたかったのだが。
長義くんは、悪いけど俺も忙しくてね、と踵を返した。
そして部屋を出る直前。
「キミ達、演練というものを知っているかな? 活用すると良い。自分が今どの程度の実力なのか。思い知った方がいいよ。それじゃあね」
そう言って、部屋を後にした長義くんだったのだが。
気のせいだろうか。もっと強くなれ、と聞こえた気がしたのだが。
そう思って首を傾げながらドアの方を向いていたら、急に肩を強く捕まれて。
「~っアンタは!! どうして危ないことばっかりするんだ!!?」
怒りながらも、でもどこか怒りではなく辛そうに震えながら、山姥切くんは続ける。
「もし斬られていたらどうするんだ!? アンタに何かあったら俺は…っ」
そこまで言って急にハッとした山姥切くんは、掴んでいた肩から手を離し、布で顔を隠した。
「…頼むから、無茶しないでくれ……」
彼は急に俯き、小声で言うので。
私はたまらず彼を抱き締めた。
「心配を掛けて済まない」
長義くん達からして、恐らく私は人間でバグという初めてのケースを作り出した、いわば観察対象。
なので、斬られる事はあっても、重症にさせる事はないだろう、という勝算はあったのだが。
今腕の中で震える彼があまりにも可愛らしかったので
詳細は語らない事にした。
続く。