第15章 報告(前編)
目は合わせてくれないが。
その手はとても暖かくて。
「ありがとう。やはり君は優しいな」
いつものようにこの言葉は素直に受け取ってくれないのだが。
代わりに表情は割と素直だと思う。
照れたその顔は、とても綺麗だった。
その後、中へ入り、受付の方に案内された。
洋風の応接室。シックな色調で、何だかとても高そうな家具たち。
ソファーもふかふかだ。初めて座ったが、凄いな、ソファー。
「待たせたね」
「…!!」
ソファーの座り心地の虜になりかけた時。
銀髪の美青年が入って来た。
…しかし、この感じは……。
「其方は、刀剣男士、では?」
「あぁ、そうだよ。生憎、政府の役人は忙しくてね。刀剣男士である俺達が代わりを務める事も多い。…俺では不満かな?」
「……。」
最後の一言は、まるで私の隣にいる山姥切くんに向けて言っているようだった。
この二振り、何かあるのだろうか。
山姥切くんは、ずっと顔を伏せて、黙っている。
私の考えを察するように。彼は自己紹介を始めた。
名を『山姥切長義』というらしい。
「俺こそが長義が打った本歌、山姥切。どこかの偽物くんとは、似ている似ていない以前の問題だよ」
「…異議を唱えても?」
「いい。アンタは何も言わなくていい」
「懸命だね。さて、本題に入ろうか」
私は釈然としないが、取り敢えず話を進める事にした。
先程、清光くんと共に作成した報告書を渡す。
彼はそれに視線を落とし、黙々と読んでいく。
暫しの沈黙の後、彼はなるほどね、と小さく零した。
「霊力の増大、ね…」
「ワタシガ未熟者ナバカリニ…」
「アンタ、急に日本語が下手になったな。これもバグか?」
彼がまぁ、いいだろう、と溜息まじりに向けられる視線が痛い。
色々と悟られていそうで、上手く目を合わせられない。
そんな時に、急に廊下が騒がしくなって、この応接室のドアが勢いよく開かれた。