第19章 梅雨(水心子正秀ver) ★
「…水心子くん……」
「ちっ、違うぞ!? わ、私はあんなものが見たかった訳では…っ!!!」
慌てふためく彼は、私の方を振り返ると、ひっ!? と声を上げた。
何故なら、私が気になって開けてしまったクローゼットの中には、露出度の高いコスプレ衣装と、手錠やら首輪やら…後は何に使うか分からない不思議な形状の器具?が多数並んでいた。
「………これは………」
「ちっ違っっ!!! ぼ、僕は決してそんなつもりで貴女をここに連れて来た訳では!!!!!!」
彼は顔を真っ赤にして、大きく首を横に振っていた。
そんな彼が可愛らしく思えて、ふふっ、と笑みが零れた。
「あぁ。分かっている。不可思議な宿屋だが、これは見なかった事にして、湯あみでも済まそうか?」
「そ、そうだな…。えぇと、風呂場は……」
そう言って、キョロキョロと部屋を見渡していた彼はまた身体を硬直させた。
不思議に思って覗いてみると、そこにはガラス張りの浴室があった。
かなり気を付けないと、部屋から丸見えである。
「なっ…何なんだこの宿はぁぁぁぁぁ!!!!!///」
水心子くんは頭を抱えて崩れ落ちてしまった。
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一体、何なのだこの宿屋は…。
いや、選んだこの部屋が悪かったのだろうか…。
こ、これじゃあまるで、僕がその…、し、下心があって彼女を連れて来たみたいじゃないか…っ///
ガラス張りの浴室に背を向けて、椅子の上に正座しながら
高鳴る心臓を落ち着かせようと水心子正秀は深呼吸を繰り返す。
ちなみに、彼女は今湯あみをしている最中だ。
心を落ち着かせようと思えば思うほど、焦ってしまって中々落ち着かない。
先程、偶然テレビから流れたあの映像も、頭から離れない。
女性の押し倒された姿、乱れた服…
あの時の彼女の姿が重なって、顔が熱くなった。
清磨は、あの時彼女にどんな事をしたのだろうか…。
彼女はどんな反応をしていたのだろうか…。
って、僕は何を考えているんだ!!!
煩悩を追い払うように、頭を強く振った。