第18章 梅雨(一期一振ver) ★
「部屋を選べるのか…。中々変わった宿屋だな? ふむ…、色々あるのだな…」
「主、私にお任せを」
「え? でも…」
「お 任 せ を 」
「あ、あぁ、では頼む…」
私は出来るだけ無難な、普通の宿屋のような内装の部屋を選び、手続きを終えた。
そして主が変なものを目にしないように慎重に部屋までお連れした。
以前、前の主…今の主のお兄様ですね。彼に一度だけ現代遠征で連れて来て頂いた知識がまさかこんな所で活きるだなんて…。
ち、ちなみに、その時も雨が酷く一旦暖を取るために利用しただけですので。何もそういう事は致しておりませんので。当たり前ですが。
「素敵な部屋だな…。それに、こ、これは噂のベッド、というモノでは…!!」
「そうですな。あぁ、主。べっどに身体を沈める前に湯あみをして来たら如何でしょう? 今のお姿では、べっどが濡れてしまいますので」
「た…確かに…。しかし、私が先で良いのか? 一期一振殿も濡れてしまったのだし…」
「私より、主の方が雨に濡れる時間も長く、身体が冷えておられますから。どうぞお先に」
「ありがとう、一期一振殿はやはり優しいな。すぐに済ませてくる」
「あぁ、急がなくても大丈夫ですからな」
バタバタと急いで脱衣場へ向かう主。
素直で、あわてんぼうさんで。
そんな貴女を、愛おしい、と感じてしまう。
…だから。マズいのです。
愛おしい、などと。刀の私が思ってしまうのは甚だおかしな話ですが。
一度思ってしまったこの感情は、中々消し去る事が出来ません。
故に、貴女と二人きりというこの状況で、私がどこまで我慢出来るのか…。
私はふぅ、と一息ついて、傍の椅子に座りこの高揚を落ち着かせようと瞑想していると。
扉の開く音が聞こえた。
随分と早いですな…。もしかしたら私に気を使って、手早くしゃわーだけで済ませたのだろうか。
そんな事を考えていたら。
主がばすたおるを巻いた状態でこちらへやって来た。
「あっ…主!? そ、そのような格好で出てくるなんて…!?///」
「え? あぁ、えっと…。服は乾いていないから、まぁ仕方ないかと思ったのだが…」
言われてみれば、そうですな。恐らく、下着も濡れてしまったのでしょう。
しかし、私には想定外だったので、動揺が隠し切れません。