第6章 時をかけあう恋~呼び名~
―――――――
―――
『家康さんの好きなものとかを知ったりして、家康さんと打ち解けたいんです。三ヶ月の間、同じ家で過ごすんです。家康さんは急にこっちの世界に来たから、戸惑うことばかりだとは思うけど、せめて家に居てる間は、少しでも不自由を減らして、居心地良いところになってもらおうと思って……』
『本当に気を遣わないでくださいね!家康さんが居心地良くできるように頑張りますから!』
―――
―――――
「確かに、言いましたけど………」
あのときに言ったことは本音だし、もちろん今も思っている。
それに、あの会話があったから、家康さんと打ち解けることが出来た。
「でしょ。はい。じゃあ、言って。」
「えっ!?今ですかっ!?」
「……言ってるそばから敬語だし…。ほら、『家康』」
「えぇっ!?そ、そそそそっ!そんな急にはっ!!」
家康さんに急かされるけど、今の私の心臓は緊張で、バクバクとかなり騒いでいる。
名前を呼ぶだけ!
だけど好きな人の名前を呼び捨てで呼ぶのは、なかなかの勇気がいる!
なかなか呼び捨てで呼ばない私に焦れたのか、家康さんのため息が聞こえ……
「はぁー…、あんた、なかなか往生際悪いね……。なら……」
そう言って、家康さんの両腕が私の方に伸びてきて……
………トン………
「言うまで、この腕退かさないから。」
食器棚に両手をついた家康さん。
その両腕の中に、私は閉じこめられた。