第7章 時をかけあう恋~呼び名~家康side
「~~~~~っ!!///」
彼女の逃げる足音が聞こえなくなると、俺はその場に頭を抱えてしゃがみこんだ……。
「(………まさか…嘘だろ……)」
ドクドク……と速い心臓の音。
自分の中の感情に気づき、彼女に惹かれていると自覚すると、今まで見てきた彼女の笑顔が浮かんだ。
どの笑顔も、眩しくて綺麗で……
笑顔を思い出してると、自分の顔がどんどん熱くなっていって、思わず頭をガシガシ!と掻いた。
「……はぁーー……まさか、俺があの娘にこんな感情を抱くとは……」
長いため息を吐いて、ぼそりと小声をこぼす。
だいぶ危なっかしいところはあるけど、明るくて気がきくし、料理も上手いし、何より自分の目標のために頑張っているし、いい娘だと思う。
俺の肩書きしか見ていないどこぞの姫や、騒がしい町娘とは全然違う。
今まで見てきた女たちと彼女を比べていたら、ふと自分の置かれている状況を思い出した……
「(……そうだ…俺はあと二月半したら…)」
戦乱の世に戻るんだった………
この時代に来たのは、たまたま事故に巻き込まれただけ。それで戻れるまでの約三月の間は、この家の人たちにお世話になっているだけだ………
「(………なのに、彼女に好意を抱くなんて……)」
気持ちに気づいたけど、この恋は絶対に実らない。
別れが確実にあるからだ……
叶わない恋をしていても意味はない。
なら、俺のこの気持ちを蓋するしかない……
そう心に決めて、俺は、彼女に対する気持ちを、胸の奥に追いやった………