第6章 時をかけあう恋~呼び名~
「な、ななななな……なんで知ってるんですか!!?」
柱に隠れて覗いていただけなのに…!
門柱から道場までは少し離れているのに…!
そんなに長い時間居てなかったのに…!
そう思ったことが、全部顔に出ていたのか、家康さんが呆れたようにため息をつく。
「……あのね…、気配も隠そうとしないで、あんなに駄々漏れ状態だったら、普通にわかるから……」
「うっ……!!」
家康さんの見事な指摘に何も言えない。
自分自身では上手く隠れていたつもりだったけど、相手はあの戦国武将の『徳川家康』
わからないわけがない………。
「………で。なんで道場に来てたわけ?帰り道、一本路地が違うでしょ?」
「あ、そ、それは………」
家康さんに、お使いの帰りに、たまたま竹刀同士の打ち合う音が聞こえたから、道場に寄った経緯を話す。
「……そういうこと…。それなら覗いてないで、声ぐらいかけたら。あんたは俺と一緒に見学に行ったんだし……」
「そ、そうですけど……でも、みんな一生懸命稽古してたから……邪魔出来ません……」
「まぁ、それもそうだけど、あんなに気配駄々漏れの方が、気になるんだけど………」
「……う……すみません………///」
そんなに分かりやすかったんだと思うと、自分のした行動がとてつもなく恥ずかしい……。