第6章 時をかけあう恋~呼び名~
料理を並べ終え、佐助くんと家康さんもダイニングにやってきたから、四人での夕食が始まる。
もちろん、今日の話題は………
「家康くん、今日からコーチだけど大丈夫だった?」
家康さんのコーチ話。
「まぁ、なんとか…。初日なんで、全体の流れとか、それぞれの腕前を見るぐらいで終わりましたけど…」
「筋の良い子とかいましたか?」
「まぁ、何人かはいたね」
お母さんと佐助くんに順番に質問されて、食事をしながら答える家康さん。
「そうなんですね。家康さんのコーチ姿、見たかったな……」
「……………気持ち悪いこと言わないでくれる…」
佐助くんは家康さんのコーチ姿を想像し、うっとりした様子で家康さんを見て……
その姿に、かなり嫌そうな表情をする家康さん。
「(……佐助くん、家康さんのコーチ姿はすっごくかっこよかったよ……)」
そして私は、心の中で佐助くんに返事をし、黙々と食事をする。
道場へ寄り道していたことは、言っていない。
別に隠すことでもないし、寄り道したからって小学生のときみたいに怒られる年齢でもない。
なんとなく、言っていないだけ……
「でも、こんな若くてかっこいい先生がいたら、女の子たちからモテモテじゃないかしら?ね、陽菜?」
「えっ!?あ、そ、そうかもねっ!」
お母さんに話を振られて、おもわず見学に行ったときのことを思い出して、頷く。
確かにあのときも、年頃の女の子たちは家康さんを見て騒いでいた。