第6章 時をかけあう恋~呼び名~
ピンポーン……
午後七時ちょっとすぎ、夕食を並べているときに家のインターホンが鳴る。
「あ、家康くんが帰ってきたみたい。陽菜、玄関の鍵開けてきてちょうだい。」
「えっ!?私が!?」
「??鍵開けるくらい別にいいでしょ?ほら、外暑いんだから早くしなさい。」
お母さんに急かされて、私はパタパタと玄関へ向かう。
サンダルを履いて、玄関の鍵を開けようとしたときに、玄関に設置している姿見が視界に入る。
「(わわっ!?髪の毛、ぐちゃぐちゃ!)」
夕食の手伝いをしていたとき、邪魔にならないようにと適当に纏め上げた髪。
こんな恥ずかしい姿は見せられないと、姿見を見ながら、急いで髪の毛を整える。
「(……これで大丈夫かな…?)」
整えた姿を確認して、そこまで変じゃないことに納得し、玄関の鍵をカチャリと解錠し、ドアを開ける。
「………ただいま…」
「お、おかえりなさいっ!!」
自分の気持ちを自覚した今、パチッと目が合っただけで、体温も心拍数もじわじわと上昇していってるのがわかる。
家康さんが家の中に入ると、ドアを閉めて施錠する。
すぐに家康さんは腰かけて、前屈みになって靴紐をほどき始める。
その姿を見ていると……
「……何?じっと見て……」
不意に家康さんが顔だけを上げて聞いてきた。
「えっ!?あ!そのっ!……ご、ご飯もう出来てるんでっ!すぐ来てくださいねっ!!」
『好き』になると、自然と目は好きな人に向いてしまう。
それを自覚して、そのことを悟られないように、早口で用件だけ伝えて、家康さんの横でサンダルを脱いで、急いでキッチンへと向かった……。