第6章 時をかけあう恋~呼び名~
ペアで面打ちの稽古をしている生徒たち。
家康さんは、生徒たちの間を移動しながら、個々に指導をしていっている。
「(…うーん……何て言ってるのか聞こえないなー……)」
竹刀の打ち合う音、道場内と門との距離も少しあるため、会話は全く聞こえない。
そもそも聞こえたとしても、剣道のことは全く知らないから、理解は出来ないんだけど………
それでも練習風景を見ていると、家康さんに指導された子たちは、剣道のことがわからない素人の私が見ても、動きがスムーズになっていたり、型がブレなくなっていたりと、動きがよくなっている。
「(………家康さん、教え方上手なのかな?)」
会話が聞こえないため、動きやしぐさを見ていても、教え方が上手い下手はわからない。
見学に行ったときの帰り道では、面倒そうにしていたけど、しっかりコーチ役をしている家康さん。
教えているときの、家康さんの横顔は真剣な表情をしていて………
キラキラ輝いていて……
その表情に目が離せなくて………
トクトク……と、心臓の鼓動が速くなっていく……。