第6章 時をかけあう恋~呼び名~
「(お母さん、よく買い忘れするなー………)」
トボトボ帰り道を歩いていたとき、お母さんから夕飯の買い忘れがあったと連絡が入り、急いでスーパーに向かって、お使いをすませる。
スーパーの袋を手に提げ、家へと歩を進めていると、微かに竹刀の打ち合う音が聞こえる。
「……あ、そっか。路地一本向こう側に、道場があるんだっけ……」
スマホで時間を確認すると、午後4時半少し前。
当に、道場が開く時間を過ぎていた。
「(家康さん、今日から初コーチだよね?)」
見学に行った日に、家康さんの剣術の腕を買われて、大会までの間コーチ役を頼まれ、それが確か今日からのはず。
「………ちょっと行ってみようかな…」
正直言って、無愛想で言葉数も少ない家康さん。
子ども達相手に、うまく関われるのか不安だし、少し様子を見てみよう。
そう思い立って、行き先を家から道場へと変えた。
道場に近づくにつれて、竹刀の打ち合う音が大きくなる。
道場の門が見えると、小走りで門に近づき、門を潜らずに門柱から顔を覗かせて、中の様子を伺う。
「(家康さんは……………あ、いた!)」
キョロキョロと顔を動かして、道場内を窺うと、道着姿の家康さんを見つけた。