第5章 時をかけあう恋~ときめく想い~家康side
そして夕方…………
「じゃぁぁーん♪家康さん!お待たせしました!!」
得意気に、俺の前にドンっ!と皿を置いた彼女。
「……………………これ、何?」
置かれたものを見て、しばし固まり、置かれたものを指差して、彼女に聞く。
「カレーです!辛いものといえばカレー!定番料理なのに、すっかり忘れてました!」
ニコニコと笑う彼女。
どうやら、俺の希望通りの『辛いもの』を作ったようだ。
「陽菜は、また家康くんが食べ慣れてないの作って……家康くんが困ってるでしょ!」
「う……でも辛いものは家康さんのリクエストだし……それにせっかくだから、この時代の料理食べてもらうのも、思い出になるかと………」
おばさんに注意をされて、人差し指同士をモジモジとさせる彼女。だんだん語尾が小さくなっている。
「……おばさん、俺が辛いもの食べたいって言ったんで、大丈夫です。」
「そう…?でも、陽菜ったら、大量にスパイス投入してたわよ?」
「だって、ちょっと辛いぐらいじゃ家康さん満足しないと思ったんだもん……。買ってきたスパイスをほとんど鍋に投入して、家康さん専用の激辛カレーを作ってみたけど……絶対辛いから味見が恐くて、味見してないから不安だけど……」
そう言いながら困ったように眉を下げる彼女。
おばさんが「味見もしてないとは……」とため息をつくと、シュン…と落ち込み、不安そうに俺の方を見る。
その表情が見てられなくて、俺はすぷーんを手に取って、「かれー」というのを一口掬い、口の中へと運ぶ。