第4章 時をかけあう恋~ときめく想い~
「…………………ならいいけど…」
そう言った家康さんの声は、少し落ち着いていて、表情も少しだけ、安堵の色が窺えた。
「ほ、本当に…勘違いさせてしまってごめんなさい……」
「別にあんたが謝ることじゃないでしょ。俺が勝手に勘違いしただけだから。」
それだけを言って、家康さんは歩きだし、私も小走りで後を追いかける。
「あ、あのっ!家康さん!今日の晩ごはん、何か食べたいものありますかっ!?」
「え?」
「えっと、今日はお母さんパートで遅いから、私が作る日なんですっ!その、勘違いさせてしまったお詫びじゃないですけど、家康さんの食べたいものがあれば頑張って作りますっ!」
「……………」
「?い、家康さん?」
なぜか家康さんの表情が、さっきみたいにポカンと目を見開いていて、首をコテンと傾げる。
「……あんたって、黙ってたり喋りだしたりと、ある意味忙しいね。それに詫びをするようなことでもないでしょ。」
「そ、そうなんですけどっ……でも家康さんが、私が黙ってるのは珍しいからって言ってたから……」
「まぁ言ったけど、今思えばあんただって考え事の一つや二つあってもおかしくないんだし、別に無理して喋らなくていい。それに俺、うるさいの好きじゃないし。」
「っ……す、すみません……」
家康さんの言葉でチクンと痛んだ胸の奥。
『うるさいの好きじゃない』
さっきも自分で、家康さんはそうかなってなんとなく思ったこと……
それに、半月も一緒に過ごしているから、普段もそんなに話をする方じゃないし、静かな時の方がいいことは薄々わかっていたことなのに……
「(……なんか……痛い……)」
さっきまで温かかった胸は、今はチクチクと痛みだした。