第4章 時をかけあう恋~ときめく想い~
「そうそう、家康さん。あの先生、インターハイっていうすごい大会にも出場したことがあるぐらいの経歴なんですって。お父さんが言ってました。」
「ふーん…。まぁ、太刀筋は悪くなかったしね。」
「そうなんですか?私、全く剣道のこと知らないから……でも二人の試合は見てて、すごい迫力は感じました!」
「あっそう。」
さっき家康さん達がしていた試合の感想を、自分なりに伝えているけど、家康さんの反応は素っ気ない。
「本当にすごかったんです!なんていうか、迫力もそうですけどっ、二人の打ち合ってるときとか、こう……間合いをとってるときとかっ!あ、あとっ、家康さんが最後決めたときは、道場内の空気が変わったというかっ!!」
あまりの反応の無さに、思わずムキになって身振りを大きくしながら感想を必死に伝える。
「ちょっ…!わかったから……腕が当たる……」
「家康さん!その言い方、絶対わかってないです!」
顔を庇うように左手を上げてガードする家康さんに、さらにムキになって、大幅に身振りが大きくなる。
そもそも、ムキになるようなことでもないけれど、一度ムキになってしまうと、なかなかその感情が抑えれない。
ムキになって、膨れっ面をしていると
「っ!ちょっ!陽菜!!!」
えっ………?
名前を呼ばれるのとほぼ同時に、家康さんに思いっきり腕を引っ張られた。
その勢いのまま家康さんの胸に倒れこみ、腕を掴んでいない家康さんの反対の手が、私の腰元に回っていた。