第4章 時をかけあう恋~ときめく想い~
「(えっ!?私、マナーモードにしてなかったの!?)」
鞄の中で鳴り続けるスマホ。立ち止まって鞄の中をゴソゴソと探して、急いでスマホを取り出す。道場内で鳴らなかったのが本当に幸いだった。
「佐助くんから?………もしもし?」
画面が佐助くんからの着信を知らせ、指をタップして、電話に出る。
「あ、陽菜さん。今、大丈夫かい?」
「うん。もう見学も終わって、家康さんと帰ってるところなの。どうかした?」
「今日、大学の剣道部に顔を出したら、家康さんが参加しても構わないって言ってくれたから、家康さんの鍛練できる場所が増えたってことを家康さんに伝えといてくれ!じゃあ、また家で!」
プツ。
ツー、ツー、ツー…………
要件だけを告げて、すぐに切れた電話。
耳からスマホを離して、鞄に戻す。
「佐助、なんて?」
「あ、佐助くんの大学の剣道部の人たちが、家康さんも剣道場を使っていいって言ってくれたみたいです!だから家康さんの鍛練できる場所が増えました!」
「………鍛練できる場所は別に1つでいいんだけど……まぁ、いいか…」
そう言って、歩き出した家康さん。私もそのあとを付いていく。
「もしかしたら、大学でも指南役をすることになるかもしれませんね?」
「………それだけは勘弁してほしい……」
ブスッと不貞腐れた顔で、ボソッと不満をこぼす家康さんに、クスクスと笑いがこぼれる。