第3章 時をかけあう恋~武将の顔~
「おや、変なことになったね………」
「…………」
生徒たちの反応に、男性は困ったように眉を下げ、家康は眉間に皺を寄せ面倒くさそうにし、陽菜と父親は困惑顔。
逆に生徒たちは、今か今かと、キラキラした瞳にワクワクした顔で待っている。
その生徒たちの様子に、男性は小さく息を吐き、困った顔のまま家康の方へと振り返ると
「康くん、一本だけお付き合いしてもらっても構わないかい?」
男性の声に、生徒たちが一斉にワッ!!と声を上げた。
男性が防具を着用し、家康も父親に着用の仕方を教えてもらい、防具を着用すると、二人は試合場へと足を進める。
「ねぇ、お父さん……お父さんの幼なじみの人、大丈夫かな…?家康さんって戦国武将でしょ……」
道場の端の方に立っていた陽菜と父親も、生徒たちの後ろの方に座ると、陽菜は小声で父親に話しかける。
「うーん………あいつもインターハイに出場したこともあるぐらいの腕前なんだが、武将相手となると……一応、さっき家康くんに防具のつけ方を教えたときに、お手柔らかに頼むとは言ったんだが……」
頬をポリポリとかきながら、困ったように眉を下げ、陽菜と同じように小声で答える父親。
「それに、家康くんも心配だな……たぶんだけど剣道のルールを知らないだろ…何がどう一本になるかとかわからないんじゃ……」
「え……じゃあ、家康さん、どうやって試合するのよ!?」
「それは、父さんにもわからん……あ、始まるぞ……」
小声で話し合っていた二人。
家康たちが礼をしている姿が父親の目に映り、陽菜に声をかけると、陽菜が試合場に目を向ければ、家康たちは竹刀を構えしゃがみこんでいた。
そして、男性の妻の「始め」の声で、二人は立ち上がった。