第3章 時をかけあう恋~武将の顔~
生徒たちが、ペアを組んで互いに面打ちの稽古をしていると
「せっかくだし、康くんもやるかい?」
「え?」
「道着も竹刀も予備のものがあるから、大丈夫だよ。ぜひ君の腕前も見てみたい。」
稽古をみていた家康に、せっかく来てくれたのだからと、家康も一緒にどうかと男性が声をかける。
どうしようかと悩んだ家康は、チラリと父親と陽菜を見ると、二人ともコクンと頷いたので、家康は「では、少しだけ…」と稽古に参加をすることになり、着替えのために男性の案内で道場の奥の扉から一度出ていった。
ジメッとする暑さ。
冷房が効いてる場内では、陽菜と父親にとっては涼しく感じるが、防具着用の練習は冷房がたとえ効いていたとしても暑く、その暑さは生徒たちの体力も集中力も奪っていく。
暑さで倒れないために、防具着用の練習になると、こまめに水分補給の小休憩を挟むようにしている。
生徒たちが面を外して、各々水分補給と汗を拭いていると、上下紺色の道着に着替えた家康が、男性と一緒に道場の奥の扉から入ってきた。
「おや、もう面打ち稽古は終わりかな?」
「だって、先生!この暑さでの面打ちは、倒れちゃうよ!……って!さっきの兄ちゃん着替えてる!!もしかして先生と勝負するの!?」
男性の声に、近くにいた小学校高学年の男子が受け答えをすると、男性の後ろにいる家康が着替えてることに気づき、まさか一試合するのではと勘違いの声をあげる。
すると、その一声は、波紋のように全生徒と陽菜たちの耳にまで届き
「え!!?先生と勝負!?」
「嘘!あのカッコいいお兄さんが!?」
「すっげー!絶対見たい!!!」
生徒たちには、試合することが確定になり、全員が試合場を囲むように座り、陽菜たちは
「「(……だ、大丈夫かな……?)」」
と、家康の方を心配そうに見ていた。