第3章 時をかけあう恋~武将の顔~
その痛みはすぐに消えることなく、チクリ…チクリ…と陽菜の胸の奥を小さく突き刺していく。
「(……え………なんで…?)」
なぜ胸の奥が痛むのかわからず、陽菜は少しでも痛みを和らげようと、自分の服の胸元をギュッと握りしめる。
すると
…………………ムニ……
「っ!!?」
いきなり頬に感じた緩い痛みに、目をぱちくりさせてると、
………ぐいーー………
「いっ!!?いひゃい!!」
頬を横に引っ張られ、パッと離れると、つねられていた頬に手をあて顔を上げると、呆れた顔をした家康と目があった。
「……あんたって、そういう顔、全然似合わないね。」
「へ?」
「いつもみたいに、へらへらしてる方が、あんたらしいと思うけど?」
「え………?」
家康はそれだけ言うと、顔を前に戻し、いつの間にか始まった稽古に目をやる。
「(……えっと………慰められた…のかな………?)」
未だに頬に手をあて、キョトンとしている陽菜は、まさか家康に慰められるとは思わなかったので、どういう風にしたらいいのかがわからなかった。
すると………
「(あれ?胸の痛み………ない…)」
さっきまでは、チクリチクリと痛んでいた胸の奥が、今では無くなり替わりに、トクトク……と、ゆっくり温かくなっていった。
「(……なんでだろ?でも……家康さんのおかげ……だよね…)」
家康と話すまでは確かにあった痛み。
だけど、家康と話したことで、それは綺麗に無くなり、逆に温かくなった。
不思議に思ったが、生徒たちのかけ声に反応し、陽菜も前を向いて稽古を見ていた。