第3章 時をかけあう恋~武将の顔~
そのとき
「はいはい!お姉さんとお兄さんを困らせない!それに、ちゃんと水分捕らないと倒れるから、皆は水分補給をしなさい。」
「「「「「はーーーい!!」」」」」
男性が、パン!パン!と手を打つと、生徒たちは大きく返事をして、各々が道場の端に置いていた水筒やペットボトルで水分補給をしたり、タオルで汗を拭う。
生徒たちが、離れていったことに、陽菜は安堵の息を洩らした。
「(た、助かった……にしても、家康さんと恋人同士に間違えられるなんて………)」
チラリと横に立っている家康を盗み見る。
スッと通った鼻筋、翡翠色の瞳に長い睫毛、きめ細かい肌に、ふわふわっとした猫っ毛が陽の光りを浴びて、キラキラと輝いている。
細身の身体だけど、半袖から覗く腕は筋肉質で逞しい。
その姿は、確かにイケメンだと騒がれてもおかしくない。
「(……でも、私は可愛いわけじゃないから、間違えられて申し訳ないな……)」
自分の可愛さに全く気付いていない陽菜は、中学生男子たちが「可愛い」と騒いでいたのも社交辞令だと思っている。
そんなことを思いながら家康を盗み見ていると、視線を感じていたのか、家康が目だけを動かし、陽菜と目を合わせる。
「何?さっきから人の顔をじっと見て……」
「ほわっ!?す、すみません!いや、あの……私と恋人同士に間違えられてすみません!家康さんにしたら迷惑な話ですよねっ!」
急に家康と目が合い、驚いた陽菜は、慌てながら恋人同士に間違えられたことを謝罪する。
「……別に、どうでもいいことだし気にしてない」
…………………チクン………
家康の言葉に、チクリと胸の奥を針に刺されたような痛みを感じ、陽菜は顔を俯ける。