第3章 時をかけあう恋~武将の顔~
「よろしく、康くん。今、稽古の最中だから、邪魔にならないように、端の方で簡単に説明させてもらうよ。」
男性に促され、三人は道場の中へ静かに上がり、邪魔にならないように端の方に立つ。
「今日は土曜日だから、朝から夕方まで開いてるけど、平日は生徒達も学校や習い事があるし、自分も仕事があるから、妻に任せていて、昼の3時半から六時半までの間だけ開いてるんだ。で、日曜日と祝日は休み。だから、開いてる日なら自由に使って構わないよ。」
「ありがとうございます。」
「ちなみに康くんの剣道の経歴は?鍛練の場を借りたいって話だけど、結構な経歴なのかな?」
「「っ!?」」
男性の質問に、ギクリとする陽菜と父親。
「あ……えっと…それは、だな……」
なんて説明しようかと、父親がしどろもどろになっていると
「……幼少の頃からやっています。」
「へぇ、小さい頃から。じゃあ大会とかでも好成績を収めてるのかな?」
「いえ、そういうのは全く……自分を鍛え上げるために鍛練しているだけなんで………」
そう言った家康の顔が、何か強い志しがあるのか、いつもと違う感じだったのを、陽菜はなんとなくだが感じとった。
「なるほど。そういう理由で始めたんだね。うちの生徒達のなかにも、そういう理由で始めた子がいるよ。あそこの男の子がそうだよ。」
言いながら男性は、ある方向に指をさす。
そこには、周りの小学校高学年ぐらいの男の子達より、少し小柄で線の細い男の子が、汗を流しながら一生懸命素振りをしていた。