第3章 時をかけあう恋~武将の顔~
そして翌日に父親の幼なじみから、道場に来ても大丈夫だと承諾をもらったため、週末の今日、父親と陽菜と家康は、道場に足を運ぶ。
門をくぐると、そこには30人弱ぐらいの小中学生の男女が道着姿になり、稽古をしていた。
入り口のところに立っていた男性が、すぐに陽菜たちに気づく。
「よぉ!久しぶりだな!連絡もらったときは驚いたぞ!」
「久しぶり!突然悪かったな」
どうやら立っていた男性は、父親の幼なじみのようで、久しぶりに再開した二人は握手を交わす。
「気にするな。で、どちらが道場を使いたいのかな?」
「あぁ、使いたいのは彼だよ。こっちは俺の娘でただの付き添い。陽菜、ご挨拶しなさい。」
「陽菜です、はじめまして。」
ペコリと頭を下げて、自己紹介した陽菜に、男性は「あぁ!」と声を上げる。
「あの陽菜ちゃんか!大きくなったし、綺麗になったね。」
「えっ!?あ、ありがとうございますっ……。でも、『あの』って……?」
なぜ男性が、自分のことを知っているのかわからず、父親と男性を交互に見る陽菜。
父親は苦笑しながら頬をポリポリとかき、男性はクスクス笑っている。
「小さいとき、すぐそこでやってたお祭りで、水風船を取ろうとして、誤って水槽に落ちたことあるでしょ?落ちた陽菜ちゃんを助けたのがおじさんだよ。」
「っ!!?そ、そうなんですかっ!?///そ、その節はお世話になりました……///」
プシュー。という音が聞こえるぐらい、恥ずかしさで顔を赤くして俯く陽菜。
まさかこんなところで、過去を暴露されると思わず、視線を彷徨わせてると、呆れたように陽菜を見ている家康と目が合い、さらに恥ずかしくなり顔を俯けた。
「どういたしまして。えっと、じゃあ彼だけがここを使いたいってことでいいのか?」
「あぁ。紹介するよ。康(やす)くんといって、少しの間、うちで住むことになったんだ。」
「……はじめまして。」
父親に紹介されて、家康はペコリと頭を下げた。
なぜ、本名ではないのかというと、佐助に本名の『徳川家康』を名乗ると、いろいろと事情を説明しなければいけないので、偽名として『康』と名乗ることになったのである。