第3章 時をかけあう恋~武将の顔~
周辺の地理を思い出すのだが………
「………ごめんね、ちょっとわからないや…」
「そうか……うーん、どうしたものか……」
陽菜の言葉に、どうすれば家康が鍛練できるかを考える佐助。道場の場所をなぜ聞いてきたかわかってない陽菜は、頭にはてなマークを浮かべているが、あることを思い出す。
「そういえば佐助くん、大学で剣道部の勧誘受けたって言ってなかった?」
「あ」
陽菜の言葉に、今の今まで、自身が剣道部の幽霊部員であることをすっかり忘れていた佐助。
大学二回生の頃に、剣道部の勧誘を受けたが、『ワームホール』の研究に没頭していたため、断っていたのだが、入部してくれるだけでいいという言葉に渋々入部し、一度行ったきり、そこからは全く顔を出していない。
しかし、これは大学に頼めばいけるかもしれないと思った佐助は、嬉々と後ろに振り向くと、冷めきった目で静かに自身を睨んでいる家康と目があったのだった。
そして、その日の夜
「剣道か弓道をやってる道場?あぁ、あるぞ。」
仕事から帰り、晩酌をしている父親に、陽菜は佐助と同じ質問を投げかけた。
「ほ、ほんとっ!?」
「あぁ、父さんの幼なじみの家が剣道の道場を開いててな。父さんも昔少しだけ通ってたんだが、夏の防具の暑さに参ってな……でも、なんでそんなこと聞くんだ?」
なぜ道場があるかを聞いてきた陽菜に疑問を浮かべると、その答えを佐助が答えた。
「……なるほど。家康くんの鍛練のためか。そういうことなら、明日聞いてみるよ。」
「っ!お父さん、ありがとう!」
「おじさん、ありがとうございます。」
「ありがとうございます。」
三人は父親にお礼を言う。父親はニコニコとしているが、ふと思い出す。
「あぁ………でも、その道場が開いてる時間、たしか昼の三時くらいからだったと思う……通ってる子が学生だから、学校が終わった時間に開くんだが……それでもいいのかい?」
「大丈夫です。少しでも出来ればいいので。」
「わかった。明日聞いとくよ。」
「お願いします。」
家康は父親にペコリと頭を下げると、ホッと息をついた。