第2章 時をかけあう恋~小さな優しさ~
「…ど、どうですか……?」
不安、期待、緊張のごちゃ混ぜになった表情で、俺を見てくる彼女。
何度か咀嚼して、飲み込むと、彼女もゴクリと喉を鳴らし、俺の反応を待つ。
「…………まぁ、悪くないんじゃない……」
俺の言葉に、彼女の大きな瞳がさらに大きなった。
「(何言ってんだ……想像以上に美味しいのに…)」
初めて食べたものだけど、普通に美味しい。
自分で得意というだけのことはあると思った。
だけど素直に思った感想は、天邪鬼な言葉に打ち勝つことは出来ず、俺の心中だけに留まっている。
「ふふっ、良かったです!」
彼女の安堵した声で、彼女を見ると、ふにゃりと顔全体を緩めて笑った。
「は?」
「家康さん、悪くないって言いながらも、すぐに取ってくれてるんで♪お口に合ったんだな~と思ったんです!頑張って作った甲斐がありました!!」
そう言って、今度は嬉しそうに満面の笑みを浮かべた彼女。
……………ト………ク………ン………
「(………っ……今…の……)」
買い物に行っていたときと同じように、胸の奥に火が灯った感覚が起こる。だけど、それは本当に一瞬のことだった。
そういえば、さっきのときも、彼女がこういう風に笑っていたときだったような…………
それを確認するために、チラリと彼女を見る。
おばさんや佐助と、笑顔で喋ってはいるが
「(………?…何も変わらない……?)」
なぜか、さっきみたいに、火が灯る感覚は起きない。
「(………まぁ、気まずかったから、彼女の笑ったところに見慣れてないだけか。)」
自分でそう解釈をして、取ったばかりの『ちきん南蛮』を口に入れた。