第2章 時をかけあう恋~小さな優しさ~
《家康side》
この時代に来て、二日。
佐助の計らいで、陽菜とかいう女の家に住まわせてもらうことになったが、幼少期の人質時代の頃を思い出したから、正直、世話にはなりたくなかった。
俺は、どの時代に居ても、肩身の狭い思いをしながら生きていかねばならないのかと思ったから………。
だけど………
『家康さんの好きなものとかを知ったりして、家康さんと打ち解けたいんです。三ヶ月の間、同じ家で過ごすんです。家康さんは急にこっちの世界に来たから、戸惑うことばかりだとは思うけど、せめて家に居てる間は、少しでも不自由を減らして、居心地良いところになってもらおうと思って……』
『あ、あの!その、私たち家族には気を遣わないでくださいね!昨日、お母さんも言ってたけど、自分の家のように過ごしてもらって大丈夫なので!』
『必要なものがあったり、生活していく上で、わからないことがあったら教えますし!あ、でも、その辺は佐助くんが教えた方が分かりやすいかっ……』
『と、とにかく!!本当に気を遣わないでくださいね!家康さんが居心地良くできるように頑張りますから!!』
この家族は、なんとなく『今川家の奴等』とは全く違うみたいだ。
邪険にしようとせず、見下したりもせず……全員が俺を受け入れ、俺と打ち解けようと、話しかけてくる。
そのことを、あの娘は、必死になって伝えてきた。
その必死さに、呆然とした。
だけど、抵抗なく、心のなかに入ってきたあの娘の言葉を、俺は受け入れていた。