第2章 時をかけあう恋~小さな優しさ~
家康の笑いも落ち着くと、特に会話はないのだが、先ほどまでの気まずさは消え去っていて、陽菜は自然と家康に話しかける。
「そうだ。家康さん、今日の晩ごはん、何か食べたいものありますか?」
「は?何、急に」
「今日は休みだから、私も一緒に晩ごはん作るんです。だから、家康さんの食べたいもの作りますよ♪」
「…………あんた、料理なんて出来るの…?」
疑いの眼差しで、陽菜を見る家康。
「あ、失礼なっ!結構得意なんですよ!お母さんの仕事が遅い日とかは、私が作ったりしてるんですから!だから、だいたいのものは作れますよ!」
「へぇー……なら、あんたの得意料理でいいよ。」
「私の得意料理でいいんですか?」
「うん。あんたの腕前がどれくらいかみてあげる。」
「っ!わかりましたっ!!頑張って作るんで、楽しみにしててください!」
そう言って、陽菜は頬が緩んで、陽だまりのようにキラキラした笑顔で家康に笑いかけた。
……………ト………ク……………ン…………
「(っ………今の…?)」
一瞬、胸の奥に、ポッと火が灯ったような温かさを感じた家康。だが、それはすぐに消え、家康は首を傾げる。
「ごめんね~!土曜日だから人多くて、レジ混んでて!」
「長々とすまない。少しトラブルが起きたみたいで、その対処に追われてたけど、無事に解決したよ。」
家康が不思議そうに思っていると、母親と佐助の謝罪の声が二人の耳に届いた。
「あ、お母さん、佐助くん。ううん、気にしないで。」
「家康くんも、ごめんなさいね!それじゃ、食料品買って帰りましょうか。」
母親の声で、陽菜と家康はソファーから立ち上がり、陽菜はすぐに母親と並び、今日のメインは自分が作ることを話す。
カートを押しながら、陽菜たちのあとを歩いていた佐助だが、家康が来ないことに不思議に思い、後ろを振り返ると、胸元に手をあてたまま、棒立ちしている家康の姿に首を傾げる。
「?家康さん、どうしました?」
「……っ…いや、なんでもない……」
それだけポツリと喋ると、家康は歩き出し、佐助を追い越す。
佐助は首を傾げながらも、家康たちのあとを追って歩き出した。