第2章 時をかけあう恋~小さな優しさ~
「え?」
「あんたも、あんたのおばさんも……なんで俺の好きなものを知れて、そんなに喜んでるの?」
――――
『あら、気にしないでいいのよ。それに家康くんの好きなものを知れて私は嬉しいわ。』
『三ヶ月の間だけど、一緒に住むんだもの。好きなものぐらいは知っておきたいのよ。』
――――
「(そう言えば、あのときの家康さん、お母さんが嬉しそうにしてるのを不思議そうにしてた……)」
好きなものを聞いたのは、陽菜も母親も同じことを思ってるから……
「住まわせてもらってるのは感謝はしているけど、どうせ俺は三月経ったら居なくなるんだし、知る必要のないことでしょ」
「そ、そんなことないですよ!三ヶ月居るから知りたいんですよ!」
「は?」
家康の綺麗な翡翠色の目が見開いて、陽菜のことをジッと見る。
「もちろん、献立に役立つのは本当ですけど、家康さんの好きなものとかを知ったりして、家康さんと打ち解けたいんです。三ヶ月の間、同じ家で過ごすんです。家康さんは急にこっちの世界に来たから、戸惑うことばかりだとは思うけど、せめて家に居てる間は、少しでも不自由を減らして、居心地良いところになってもらおうと思って……」
そして、こう思っているのは、陽菜と母親だけでなく、父親と佐助も思っていること……
「……あんたは、反対してたのに…?」
今度は疑いの眼差しで、家康が陽菜をジト……と見る。
「あ!あれは!///その……は、は……~~~~っ!///」
昨日の夕食時のときと同様、続きの言葉が出なくて、陽菜の顔は熱くなり、恥ずかしさから顔を俯ける。
「……あ、あんなことがあった直後だと、どう接していいかわからなかったから、反対したんです……///…ちゃんと謝罪も出来ていなかったのに、一緒に住むって話になったから……」
「謝罪……?」
「…はい……あの…昨日は私の不注意で……その…っ…///……本当にすみませんでした…」
陽菜は身体を家康の方へと向けると、座ったまま、頭を下げて家康に謝罪した。