第2章 時をかけあう恋~小さな優しさ~
食事も終わって蕎麦屋さんを出ると、日用品や雑貨などを買いまわり、最後に食料品を買って帰ろうと食料品フロアへと向かおうとしたとき、父親から連絡があり、買っといてほしい本があると頼まれた母親は本屋へ向かう。
すぐ戻るという母親の言葉に、母親が戻ってくるまでの間、三人はフロアの通路に所々置かれているソファで小休憩をしていると、佐助も大学の研究仲間から連絡が来て、陽菜と家康のそばを離れて電話に出た。
「「………………」」
「(……き、気まずいっ……!)」
常に母親と佐助が家康に話しかけていたため、気まずさは感じていなかったが、二人にされると何を話していいものか悩んでしまう。
しかし、その頼みの二人は買い物と電話中。
これから三ヶ月、一つ屋根の下で暮らすのだから、少しは打ち解けていた方がいいと思い、陽菜は羽織っていたレースのロングガウンの裾をギュッと握る。
「……あ、あの!」
土曜日でショッピングモール内はいつもより人が多いため、隣同士に座っているが、周りの音で声が掻き消されないように、あとは家康と話すという緊張からか、陽菜は少し大きめの声を出した。
「………何?」
「あ、あの…えと……買い物は楽しめました?お母さんも佐助くんも張り切ってたから………疲れたりしてませんか……?」
「………いや、大丈夫。」
「あ……そ、そうですか……」
10秒程で会話が終了し、撃沈する陽菜。
「(う~……お母さんも佐助くんも、早く戻ってきて……何か話題、話題…………あ。)」
そこで陽菜は、昼食時のことを思い出し、好きなものを聞く作戦に出た。