第2章 時をかけあう恋~小さな優しさ~
「ふぅ~。買ったわね~♪じゃあ、そろそろお昼にしましょうか。」
ひととおり家康の衣類は調達することができ、母親は腕時計で時間を確認すると、お昼のピークも落ち着くぐらいの時間のため、四人はレストラン街へと向かった。
洋食などは家康が食べたことがないだろうからと、蕎麦屋さんに入ったのだが……
「「「…………………」」」
注文した料理が届くと、家康は佐助に唐辛子はないのかを聞く。机の端に置いてある一味唐辛子を家康に渡すと、家康は蕎麦が見えなくなるぐらい大量に一味唐辛子を振りかけており、三人の視線を感じて、怪訝な表情で佐助に聞く。
「…………何?」
「いや………ものすごくかけるんですね……」
「あぁ……辛い方がいいから。」
それだけ言って、自分の満足のいく量をかけきった家康は、蕎麦をすすっていく。
「家康くん、辛いものが好きなのかしら?」
「あ、はい。まぁ……だいたい何にでもかけます。」
「そうなの?なら、家康くん専用の一味も後で買いましょうね♪」
「え、いや……そこまでしていただかなくても…」
ただでさえ居候させてもらってる身。今日も大量に服を購入してもらったため、専用のものまで用意してもらうのは申し訳なさを感じる家康。
「あら、気にしないでいいのよ。それに家康くんの好きなものを知れて私は嬉しいわ。」
「え……?」
「三ヶ月の間だけど、一緒に住むんだもの。好きなものぐらいは知っておきたいのよ。」
「……そう、ですか……?」
「ふふ。そうなのよ♪」
家康の好きなものを知れて母親はニコニコと微笑み、蕎麦をすすっていく。
一方の家康は、なぜ好きなものを知りたいのかがわからず、一度だけ首を傾げ、また戻して蕎麦をすすった。
そんな不思議そうにしていた家康の顔を、陽菜は黙って見て、自分も蕎麦をすすっていた。