第2章 時をかけあう恋~小さな優しさ~
引っ張られた弾みで、陽菜の腕が家康の身体と少しだけ触れ
「……………ぶつかる…」
少しだけ優しさが含まれた小さな声で、注意する言葉が、頭上から聞こえた。
…………ト……………ク………ン……
「(……え…?)」
一瞬、何が起こったのかわからなくなり、陽菜の頭の中は真っ白になる。
だが、家康の手が離れると、消えた温もりにハッとして、後ろを振り向くと、すれ違った人が見え、人とぶつかりそうになっていたのだと気づく。
「あ、ありがとう…ございます……」
「別に……人多いんだし、気を付けなよ」
小さな声でお礼を伝えると、家康はまた注意を促すことだけ伝えると、家康は先に佐助と母親のあとを黙ってついていき、陽菜もその後をついていった。
「(さっきの…………何だったんだろ……)」
歩きながら、自分の胸元をギュッと握る。
一瞬だけ、胸の奧がじんわりと温かくなったような感じがしたと思ったのだが、今はもう普通に戻っていることに、少し不思議に思う陽菜。
「(家康さんに引っ張られて、驚いたからかな……?)」
未だに、二人だけでは話したことがなかっただけに、家康の行動に驚いたからだと思い、今はもう普通に戻っているからと、陽菜はそれ以上深く考えずに、三人のあとをついていった。