第1章 時をかけあう恋~ファーストコンタクト~
話しかけると、ゆっくりと口が動くのが見える。
「…………ねぇ……」
「?はい」
着物を着た男性から続きの言葉を待っていると……
「………ここ……………どこ…?」
はい?
「………………」
この男性の質問の意図が全くわからない。
思わず、そのまま固まってしまうと、男性の眉間に皺が寄り、もう一度聞いてきた。
「聞いてる?ここはどこだって聞いてるんだけど。」
「あっ、すみません。ここは京都の本能寺跡地です。」
「………本能寺………あとち?」
今度は質問にちゃんと答える。
だが答えを聞いた男性は、さらに一層深く、眉間に皺を刻む。
「はい。石碑にもしっかり書いてます。『本能寺跡地』と。現在は、別のところに再建されている本能寺が、ここから歩いて30分ぐらいのところにありますが……」
石碑に書かれている『本能寺跡地』のところを指さすと、男性は傘から出て、石碑に近付くと、しゃがみこんで、指でその字面をなぞりながら目視で読んでいく。
未だ雨が止む気配もないので、男性が濡れないように、近付いて後ろから傘を傾けると
「……………ねぇ…今って……何年?」
こちらへ振り向いて、またまた、似たような質問をなげかけてきた。