第2章 時をかけあう恋~小さな優しさ~
一時間後……
出かける準備が出来、全員が玄関を出ると、母親が車のエンジンをかけたのだが、初めて車を見た家康は、エンジンをかける音に少し驚く。
「(あ、そっか。戦国時代にはないもんね……)」
たまたま、家康の横に立っていた陽菜は、家康の驚く顔が見えたため、乗り物であることを説明しようと口を開こうとしたら
「家康さん、これは車といって、現代での移動手段の一つなんです。戦国時代でいうところの駕籠が進化したものですね。人が運ぶのではなく、自分でこの車を運転…えっと、操作して目的地まで向かうんです。」
家康が戸惑っているだろうと思い、佐助が車のことを簡単に説明し、後ろのドアを開けて、家康に「どうぞ」と声をかける。
家康が恐る恐る車に乗り込むと、ドアを閉めて反対側に廻って佐助も車内に乗り込み、陽菜も助手席のドアを開けて車内に乗り込んだ。
「あ、シートベルトしてくださいね。安全装置のことで、ここを引っ張って……」
シートベルトのことも必要性などを説明しながら、止め方を教える佐助。
初めての車に、初めてのシートベルト。
家康の顔は、緊張と不安が入り交じった表情で、背もたれに凭れることなく、姿勢正しく座っていた。
全員がシートベルトをしたのを確認した母親は、パーキングからドライブに切り換えて、アクセルを踏み込んで出発した。
最初はガチガチに緊張していた家康だが、佐助に交通ルールを教えてもらったり、母親達と軽く会話をしていく内に緊張も少し解け、背もたれに凭れていたのだった。