第2章 時をかけあう恋~小さな優しさ~
佐助の説明を黙って聞いていた家康は
「ふーん……わかった。」
たった一言だけ呟くと、残っていたお茶を飲み干し、空になったコップをキッチンにいる母親に渡しに行った。
「(………そ、それだけ?)」
ありがとう。とか感謝の言葉ぐらいあってもいいんじゃないの?と思った陽菜は佐助の方をチラリと見ると
「家康さんの塩対応……堪らないな……」
佐助自身は、大ファンの『徳川家康』と話せていることにうっとりしていて、無愛想な態度にも気にしていなかったため、陽菜も佐助が気にしていないならいいかと思い、落ち着いて食事を再開したら………
「……ごちそうさまでした」
「あら、家康くん、ありがとう。そうそう!家康くん、このあとお買い物に行きましょうね!」
「……え?」
コップを母親に渡すと、嬉しそうに家康に買い物を誘う母親の声が陽菜と佐助の耳に届く。
「三ヶ月ここに住むなら、家康くんの服とか要るものを用意しないといけないでしょ?それを買いに行きましょう♪」
「え、いや……別にそこまでは……」
「おばさん!それ大賛成です!ぜひ行きましょう!」
勢いよく席を立ち上がり、母親にグーサインを向ける佐助。
「家康さんが俺の服を着てくれるのはとても嬉しくもあり、申し訳なさも感じていましたので……。ですから、家康さんに似合う服を是非とも買いに行きましょう!!トータルコーディネートしましょう!!!」
「そうよね!そうよね!トータルコーディネートしましょう!!家康くんイケメンだから、きっと何でも似合うわよ~♡」
「「………」」
佐助と母親の盛り上がりに、陽菜と家康は口を挟む暇もない。
「よし!そうと決まったら陽菜!ちゃっちゃとご飯食べて出かける準備をしなさい!」
「えっ!?私も行くの!?」
てっきり、佐助と母親と家康の三人で行くと思っていた陽菜は、母親の言葉に目を見開く。
「当たり前でしょ!お母さん、今の若い子の流行がわからないし。」
「俺からもお願いするよ。ぜひ女性目線で家康さんをさらにイケメンにしてくれ!」
「……………わ、わかった…」
母親と佐助の圧に圧された陽菜は、同行に承諾すると、母親に急かされながら朝食を食べ終えたのだった。