第1章 時をかけあう恋~ファーストコンタクト~
「とにかく、お父さんも陽菜も座ってちょうだい。お父さん、何も二人が疚しいことをしたわけじゃないのよ。もし疚しいことしてたら、気まずすぎて、普通に食事なんて出来ないでしょ。」
「……う、む……確かに……」
母親の言葉に、冷静を取り戻しつつある父親は、納得する。
一方……
「(………いや、お母さん。今も、気まずいんだけど……)」
「(……疚しいことはしてないけど、気まずいのは気まずいな……)」
陽菜と家康は、思っていることがシンクロしていた。
「あと、陽菜。反対って言ってるけど、家康くんにとっては、いきなり知らない世界に来たのよ。もし住む場所とかに困って、変なところに連れていかれたりしたらどうするの?それこそ家康くんが、元の時代に戻れなくなるでしょ。」
「う………そ、れは…そう、だけど………」
母親の言い分はもっともである。自分が裸を見られた。というだけで反対するのは、いささか子どもすぎたかもしれない。と反省する陽菜。
「部屋も空いてるんだし、別にいいでしょ。反対する理由がどこにあるの?」
「…ありません……。」
陽菜の返事に、母親はにこりと微笑み、陽菜の頭を優しく撫でる。
そして家康の方へ顔を向けると
「ごめんなさいね、家康くん。お見苦しいところを見せちゃって。」
「あ…………いえ……」
「こんな家族だけど、よろしくね。家康くんも、今日から、この家を自分の家のように過ごしてもらって構わないからね。ささっ。皆、ご飯食べちゃいましょ。」
そこからは母親のほんわかした雰囲気と、美味しい食事のおかげで、場は和んでいき、家族団らんの時間になった。
そして、今日から家康の現代での生活が始まった。