第1章 時をかけあう恋~ファーストコンタクト~
佐助と家康がダイニングに着くと、テーブルの上には五人分の食事が、陽菜と母親の手によって並べられていく。夕飯を作っているときに、陽菜の父親も仕事から帰宅して、ラフな格好に着替えて、夕刊を読んでいた。
「おばさん、陽菜さん、ありがとうございます。おじさんもお帰りなさい。」
「佐助くん、ただいま。あ、お友達もいるんだね。いらっしゃい。」
「………お邪魔しています。」
軽く会釈をして挨拶する家康。
ちょうど食事も並び終えたので、全員がダイニングの席につくと、食事が始まった。
「ごめんなさいね。簡単なものばかりで……お口にあえばいいんだけど……」
「いえ、ありがとうございます。いただきます。」
家康は箸で煮物の人参をとり、口に入れる。
いつも何にでも唐辛子を大量に振りかけて食べているが、今は持っていないため、本来の味を味わう。
薄味だが、食材にしっかり味がついていて、優しい味付けだ。
「………美味しいです。」
家康が思ったまま感想を言うと、母親は嬉しそうに微笑む。
「良かったわ、お口にあったみたいで。遠慮せずに食べていってね。えっと……」
名前を言おうと思った母親が、そういえば聞いていなかったと思い、佐助の方をチラリと見ると、一連のやり取りを見ながら食事をしていた佐助が、箸を置いて姿勢を正す。
佐助に続き、家康も箸を置く。
「おじさん、おばさん、陽菜さん。ちょっと話しておきたいことがあるんです。」
真剣な表情の佐助に、陽菜たち家族は顔を見合わせる。
「なんだい?話って?」
先を進めるように父親が佐助に促す。
「俺が、タイムスリップする時に現れる『ワームホール』について研究しているのはおじさん達も知ってることですが、実はそのワームホールが今日出現したんです。」
「あら、凄いじゃない。研究結果が出たのね?」
佐助の言葉に、母親が感心したように声をあげる。
父親と陽菜も、驚いたように佐助を見る。
「はい。それで、今日出現したワームホールによって、こちらの『徳川家康』さんが、戦国時代よりタイムスリップしてきました。」
家康の方へ手を向け、家康の紹介と研究結果を報告した佐助。