第1章 時をかけあう恋~ファーストコンタクト~
ガチャガチャっ!
「ただいま~……お風呂、お風呂っ!」
玄関の扉を開けると、びしょ濡れで帰ってきた、この家に住む娘、陽菜。
看護学校に通っており、その帰り道、いきなり降ってきた大雨。降水確率0%を信じていたため、もちろん傘は持っていかず、奇跡的に折り畳み傘も鞄には入っていなかった。
最寄り駅に着いたときには、もう降っており、駅の中にあるコンビニに入ると、突然の大雨で傘は売り切れ。
雨が止むのを待とうかと思ったが、一向に止む気配はなく、雨足は強くなっていく。
仕方なく、走って帰ろうと思い、駅から離れると、走って2、3分ぐらいのところで……
バシャンっ!!!
道路に少し溜まりだした水たまりの上を、猛スピードでトラックが走っていったため、その水しぶきが、陽菜に降りかかる。
「きゃっ!!……嘘!これ買ったばっかなのに……も~!ツイてないっ!!」
つい最近買った、グレーのグレンチェック柄に黒い細ラインが縦横に大きく間隔をあけて入った、膝丈のAラインのシャツワンピース。
セットで黒い細ベルトも付いていて、マネキンにディスプレイされているのを見て、一目惚れして即買いした洋服。
それを走っているトラックに汚され、さらには降り続ける雨によって、洋服はどんどん本来の色より濃くなっていく。
家に着くまでの間にコンビニに寄って、傘がまだ残っていれば買うつもりでいたが、ここまでびしょ濡れになれば、さすがにコンビニに入店しづらい。
「……もう、このまま帰ろう…。」
なるべく、屋根があるようなところを走りながら、自宅を目指す陽菜。
一度、屋根があるところで雨宿りをし、鞄からスマホを出し、佐助に「お風呂を沸かしておいてほしい」とメッセージを打つと、また家に向かって走り出し、家康がお風呂に入って間もなくしたときに、家に着いたのである。