第1章 時をかけあう恋~ファーストコンタクト~
「では、家康さんがお風呂に入ってる間、着替えを持ってきます。俺ので申し訳ないのですが……」
「いや、構わない。それより、湯浴み着はないの?」
「湯浴み……あぁ、お風呂に入るときに着るやつですね。すみません。現代では何も纏わず裸で入浴するんです。」
「え…そうなの……?」
現代のお風呂事情までもが、戦国時代のものと違うことに、家康は驚く。
「はい。残念ながら着ません。まぁ、この時間だと、まだ誰も帰って来ないですし、気にせずゆっくり湯船に浸かって、冷えた身体を温めてください。では。」
そう言って佐助は脱衣場のドアを閉め、自身の部屋に着替えを取りに行った。
「はぁ……なんか一気に疲れた……」
佐助が出ていったあと、深くため息をはいた家康。
知らぬ間に、知らない時代、土地にタイムスリップしたため、いつも以上に気を張ってしまい、身体に要らぬ力が入っていた。
「……とりあえず、風呂に入るか……」
長時間雨に濡れて、身体は冷えきっている。それに、自身を付きまとっている不安や焦りなんかも、お風呂で流し去りたい。
羽織を脱ぎ、腰元に挿していた刀を取って壁に立て掛け、帯をほどいて、着物と襦袢を脱ぐと、鍛えぬかれた裸体が表れる。
その背中や肩、腕などは、鍛練や戦でついた刀傷などが沢山あった。
家康は浴室のドアを手にかけ、ゆっくりと押し開けると、浴室へと入っていった。