第2章 〜 再会、新しい出会い 〜
部屋に戻って今日持っていくものを鞄に入れてる。
と言っても、今日は入学式だから持っていくものは少ない。
入れ忘れたものがないか確認して、一階にあるキッチンへ向かう。
中を覗くと英のお母さんである久美(くみ)さんが朝ご飯を作ってくれているところだった。
『久美さん、おはようございます。 手伝いますよ』
「あ、葵ちゃんおはよう! ありがとう!」
国見家にお世話になってからは少しでも自分にできることをしようと久美さんと一緒にご飯を作らせてもらっている。
久美さんと秋人さんは仕事でほとんど家にいないことが多い。 だからその時は私が作っている。
「葵ちゃん」
久美さんに呼ばれて野菜を切っていた手を止める。
『はい?』
「あのね、私ずっと葵に言いたいことがあるの」
なんだろ?
『何をですか?』
「私ね、葵ちゃんに伝えなきゃいけないことがあるんだけどそれをずっと延ばしてきたの それはすごく辛いことで、葵ちゃんに私たちが嫌われないためにって勝手な理由で… 本当ごめんね。」
『伝えなきゃいけないこと?』
久美さんは基本明るい。
けど、こんな風にすごく真剣な表情で話すのはそれほど大事な話ってことなんだろう。
「けどね、もう逃げたくない。 6月21日… 葵ちゃんの誕生日、その日は私も秋人さんも仕事から帰って来れるの。 その夜、みんな家にいる時にその話をしたいの。」
『わかりました。 お願いします。 けど、大丈夫ですよ。 久美さん達に辛い思いをさせてしまってすみません。 私が久美さんを嫌いになることなんてないですから。 ずっとどんなことがあっても大好きです。』
真剣な表情を見せる久美さんにそう言う
この言葉は決して今このために言ったんじゃない。 本当のことだ。
学校で辛いことがあっても頼れる、戻ってこれる場所を用意して待っててくれた久美さんと秋人さん…(英も)
この暖かい人たちを壊したくない。