第17章 甘え
ふと何気なく、頬や髪の毛に柔らかく暖かい感触を感じ、瞳は閉じたまま不意に目が覚めた。
カカシ君が、一緒のベッドの隣で寝てたのに、今は起きて、私の頭や顔を優しく撫でている。
何を夜中にしてるんだろう、そう思った私は目を開けて喋ろうとした。
すると、カカシ君が溜息を吐き、小さく呟くような声が聞こえた。
「花奏さん……任務だと言うなら、あなたはどうして仕事の報酬を受け取っていないのですか?
三代目から話を聞いた時、オレは心底驚きました。事実を知り得たのは、最近の事なんですよ?どうしてですか?
父さんが恩師だから……
「師匠の恩をお返したいから、お金なんか全然かからない」と、三代目に最初に言ってその後一切断ったらしいですね。
だけど猿飛様に花奏さんはお願いをする。
「その変わりに、その報酬金は、オレの将来に役立つようにずっと貯めておいて欲しい、大きくなれば三代目から直接に渡して欲しい」と伝えます。
子供の将来を願う親のように……。
花奏さん……
オレは、その事を
一切知らなかったんですよ。
任務だとは初めから知っていました。
小さなガキのオレは、里からのお金をしっかりと受け取っていると思っていました。だからあなたにお金の話を全くしなかったんです。普通は受け取っているのが当たり前ですからね。
小さいオレのために、毎日料理を作ってくれた食費や、泊まりのためのパジャマや下着や着替えや、歯ブラシ、お風呂のタオル、オレが成長するに連れて、毎回、全部新調していつも用意してくれたお泊まりセット。
そのかかった費用は、すべて花奏さんが自分で稼いだお金、生活費。
一切惜しまずにオレに使った。
この事実をオレは知らずに、知るすべも無くも、ここまで育ちました。
真実を知った時、オレは無我夢中で三代目に署名してもらいましたよ。あなたに恩を返したいと思っていたのに、最初からスタートの位置が違いました。
なぜ、オレにそこまでしてくれるんですか?
本当にオレは幸せ者でしたね。
あなたのおかげで、ここまで生きてこれました。
今日、やっと
やっと一つ、恩をお返し出来たと思っています。
全然足りないんですが、やっと、今日一つ目。
これから一生かけて恩返しをさせて下さいね。
あなたを幸せにしたいんです。