第17章 甘え
私がまだしつこく瞳を心配そうに見ていれば、カカシ君が真面目な声を出す。
「花奏さん、七歳の時、一人のオレを助けてくれてありがとうございました。オレがあなたと離れるまで、毎日御飯を作ってくれたり、週一回ですが泊まらせていただいたり、オレは父さんが亡くなったのに、花奏さんのおかげで、そこまで悲痛な人生を歩まずにすみました。
だから、あのお金はオレの気持ちなんです。ちゃんと、受け取ってください。」
「いや、だから……あれは……!」
あれは、大事なサクモ先生の遺産だし、カカシ君が一生懸命、忍として任務を遂行した報酬金。
私があのお金を受け取るわけにいかない。大事な大事なカカシ君の宝物。
そんなつもりでカカシ君に接したわけじゃない。お金なんかいらない。彼の人生をダメにしたくない、サクモ先生の恩を返したい、そんな思いから、彼の人生に役立つ努力をしよう、そう誓っただけ。
だいたいあれは任務で、ランクで言えば、Dランクの任務と同じ扱い。
三代目火影である猿飛様より、サクモ先生のお葬式の次の日に呼び出され、任務としても、体調管理に気を配り、そばにいるように任命された。
サクモ先生の事で、カカシ君が身体や精神的に参ってないか、猿飛様はそれが一番心配していて、私は二週間に一度は報告していた。だから彼が決してそこまで恩に感じる事はない。
カカシ君が上忍になった時、四代目から指令が下り、その任務は終了したが、私は彼のそばにいたくて変わらない対応をしていた。
任務じゃなくても、私は関係なくカカシ君のそばにいたかった。
修行をみていたのも、サクモ先生以上の才能が彼にあるんじゃないか、そう思って私はワクワクしながら技を教えたり、アドバイスしたりしたのだ。
ただ、カカシ君に喜んでほしくて私はずっと、頑張っていたと思う。彼がそばにいるだけで本当に嬉しかったのだから。
小さな恋人に、私はずっと人間としても初めからカカシ君に惹かれていたように思う。