第16章 挨拶
「カカシ君……やり過ぎ。あれはダメだよ、あなたの大事な遺産でしょ?私が貰うなんて、おかしいよ。あれは受け取れない。」
私はドアを閉めてカカシ君の側に座り、丁寧に話をする。
その声に反応するように私の方へ顔を向け私は目を見開き、声を失う。
「っ!!!!」
そこには、散々泣き腫らしたように、赤く瞳を充血させたカカシ君がいた。
カカシ君が、ゆっくり言おうとするのに声が震え、上手く出せない。何度も息を吐いて私に言葉を伝え始めた。
「ごめん…全部勝手に決めてばっかで……何も言わなくて辛い思いをさせて本当にごめん。相談しなくて、本当に、本当に……ごめん……これからは、ちゃんと、ちゃんと言うから」
カカシ君が震えるように伝え、
ボロボロ涙を流し、すこし間を空け、
深呼吸し、続けた。
「だから……お願いだから…
花奏さん、オレの事、オレのことを、お願いだから嫌いにならないで。全部ごめん、許して……」
カカシ君は、廊下で言った話をやっぱり聞いていたようで、私を縋るように泣きながら強く抱きしめてきた。
激しく泣きじゃくるカカシ君は、まるで糸が切れたように涙を流している。
彼がどれほど必死に私の父に私との結婚を訴えたんだろう、どれほどの責任や重圧を感じながら今日を迎えたのだろう、そう思うと胸が張り裂けそうになる。
「大丈夫だよ…嫌いになんかならないよ、カカシ君が私は大好きだよ。ありがとう、ひとりで頑張ってくれて。私、本当に嬉しいよ。ありがとうね、カカシ君。」
「花奏さん……花奏さん……」
「もう泣かないで、カカシ君……大丈夫だから…」
優しくカカシ君が安心して、心が落ちつくように声をかけ続け、泣き止むまで、私はずっと、優しく抱きしめ、頭を撫でていた。
その泣じゃくる姿は、
カカシ君が初めて私に見せてくれた
心の弱さだった。