第16章 挨拶
「これ、金庫にちゃんと保管しとけ」
「何ですか、これ……えっ!やだ、大金じゃないですか!何のお金?」
「カカシ君の全財産と土地、家の権利書の巻物、はたけサクモさんの遺産書類だ。」
間を置いて、私にも聞こえるように大きな声で言い続けた。
「花奏が昨日、二十五歳になった日付けで全財産を譲ると捺印済みの書類だ。三代目の印も署名もあるぞ。土地の権利書は、彼が未成年だから難しいらしくてな、結婚したら全て花奏に相続すると正式な書類も作成してある。」
あまりに衝撃的な話に、私は全くついていけず、ドタドタ走り書類や資料、巻物を舐めるように見つめた。
「……何これ、カカシ君…全然お金使ってないじゃない……ええ?だって……」
指輪やネックレスやブレスレット、ピアス……私のことにしか使っていないことになる。思わず、まだ彼がいる客間を責めるように見ていた。
ゆっくり視線を戻し、再度、確認したけど、一切不備の無い正式書類が全部机の上に並べられている。私はあまりに息を詰まらせた。
母は驚愕の金額や書類の重要さに瞬時に理解し、真っ青になりながら、金庫の中に入れるのさえ、躊躇し震えている。
示された金額は、桁違いの大金であり、この家族の総全財産を合わせても足元にも及ばない。見た事も無い数字がそこには並べられていた。