第16章 挨拶
「じゃあ、嫌いなところは?治して欲しいところはどこだ?」
お父さんの声に反応するように、私は目が泳ぐ。ドクンと、心臓が打つ。
父に見透かされたような質問に私は答えをすぐに出せないでいる。
カカシ君の嫌いなところなんか、一つも無いよ!って言おうとしたのに、なぜか涙が広がり、一生懸命に泣かないように堪えていた。
「カカシ君は、そうだな、いつも……何でも一人で全部決めちゃうところかな。あと、頼ってくれないところ。弱音を一つも見せてくれないところ。悩んでいるのに、相談してくれないところ……かな。」
「じゃあ、そこはちゃんと話し合って直してもらえ。花奏が十五歳のカカシ君とやりたい事は何だ?彼が十八歳になるまで待つだけか?やりたい事は。他にしたい事は何だ?」
「やりたい事……そうだね。うん、いくらでもあるよ。」
カカシ君も聞いているだろう、ゆっくりと答えた。
「一緒に遊びに行ったり、ご飯食べに行ったり、ゆっくり二人で旅行とか行きたい。恋人らしい事……いっぱいしたい。」
涙を堪えきれず頬を何度も拭いながら答えれば、父は私を見て諦めたように話し始めた。
「お前がやりたい事をやれ、んで十八になったらカカシ君に結婚してもらえ。それでいい。」
ポンと私の肩を叩き、リビングに向かった。
「えええ⁈⁈」
バッと振り返って父を見るが、手に持つ酒は、ほぼ全部飲み切っているのに一切酔っていない。それどころか、いつもよりシラフに見える。
どんな話をしたんだ、と父を見れば、反対側の手には書類と巻物を持っている。
父に何の書類か確認しようとすれば、
リビングの机の上に、父が丁寧に巻物や書類を置けば、母を手で呼びつけた。